大東亜共栄軒 1
Great east asia co-prosperity Restaurant 1

2006年4月28日
out-lounge 大塚・東京
イトー・ターリ(日本)

タイトル「虹色の人々」2004/8    写真撮影:芝田文乃

イトー・ターリ 「Meditating Body」について

最近の彼女の作品で印象深かったのは、東京大塚のアウトラウンジで2005年8月に行われた「Meditating Body」だ。私が知っている今までのイトー・ターリさんの作品とは違っていて、彼女をよく知る友人は「彼女の原風景に近い作品だ」とコメントしていた。

まず、骸骨を抱いて客席から静かに登場してくる。そして骸骨に接吻し、愛撫する。
その光景は、時に骸骨が彼女に乗り移ったように、時に彼女が骸骨になったような感覚さえする。そして、骸骨に命がよみがえったような錯覚も実際した。

それから、天井から吊るされた約1メートル四方ぐらいのブタの皮(ちょうど上半身が隠れるぐらいの大きさ)の後ろにまわり、ゆっくりと近付いたり、遠のいたりする。


客席側からは、近付いた場合は、彼女の姿は、はっきりとしかしながら、少しゆがんで見え、遠のくと、曇りガラスのような状態になる。
その姿は、何かを叫んでいる様にも、何かを愛撫しているようにも見える。皮膚の中でうずうずしている、言葉にならない感情、それは時たま何かの拍子に戻って来る、片隅においやられた記憶のようなもの喚起させられる。

そして、次はコンタクトマイクを使い、そのブタの皮や自分の皮膚になすりつけていく。その音は剃刀で顔を剃る音よりも荒々しく、だんだんと自分の皮膚感覚を確かめるように、強くなっていく。それから、彼女はブタの皮を小さく、小さく、自分の爪までも切ってしまいそうな勢いで、はさみで切っていく。

次に何枚もの戦時中などの写真を本のようにまとめられものを1枚、1枚めくっていく。と同時に後ろの壁にセットされていたプロジェクターが、(カメラでリアルタイムで撮っているものに向けて、映し出されているため)鏡を鏡で映したような効果になり、ブタの皮のひだ、彼女の姿のひだが左画面に映し出される。そして、右側には彼女の自宅から、彼女が運営するスペース「PAF」に行くまでの風景が映し出され、右側の光りに反応するように、左の画面(ひだ)が変わっていく。

彼女は自宅から「PAF」までの映像の前に座禅する。そして彼女の瞑想風景を見るように、右と左の画面がうまいように、計算されたように呼応されていく。最後は、横たわっていた骸骨とともに退場する。

私が、今までみた彼女の作品は、フェミニズムの視点に強くこだわったものが多かった。そして、今回の作品に関して言えば、フェミニズム的はコンセプトは退け、彼女の思うまま、彼女はもう1回、自分の皮膚感覚に戻りたい、戻るという決意をしているようにも見てとれた。

多くのフェミニズム的な理論武装に顔を出し、戦ってきたのだと思った。以前にもまして、「皮膚」と「その皮膚に蓄積された記憶」というテーマが強く打ち出されたものとなっていた。

「私にできることは、死者の記憶にすこしでも近付くことだけだ」とでも言わんばかりに。

また、パントマイムのアーティストとしてもキャリアが十分にあるアーティストだが、そんな技術や機材が全く嫌みに見えず、余裕を感じさせたことも付け加えておきたい。

田上真知子(out-longe)



2005 ・パフォーマンスin 石響(東京)『虹色の人々』
・F+Fプロジェクト フィンランドツアー(ヘルシンキ、ヴァーサ)『Meditating Body』
・移動式WALLproject out-lounge主催 (東京)
・栃木県立美術館主催『前衛の女たち1950-1975』展に参加(宇都宮)
・On the Move: The Body Projectに参加 People's Theater festival Soceity主催(香港)
・ナヌムの家 絵画・写真展関連イベント wam女たちの戦争と平和資料館展示会場(東京)
2004 ・「Borderline Casesー境界線上の女たちへ」展 FAAB主催(東京)
・ディプラッツ主催ダンスがみたい!に参加(東京)
・第6回シアターX 国際演劇ダンスフェスティバルに参加(東京)
・イトー・ターリ個展 パフォーマンス+インスタレーション+ビデオ『虹色の人々』A.R.Tギャラリー(東京)
2003 ・東京バビロン企画パフォーマンスプロジェクトに参加 「反戦Vol.2」    
・FAABに所属する
・From my Finger-Living in the Technological Age (高雄)
・Highways Performance place (ロサンゼルス)
2002 ・「恐れはどこにある」関西パフォーマンス公演、立命館大学アートリサーチセンター、
 クレオ大阪中央
・第2回フェミニストアートフェスティバル「East Asian Women andHerstories」 ソウルに参加
・ウィメンズアート韓国ツアー参加 ナヌムの家・日本軍慰安婦歴史館式典でのパフォーマンス及びアーティスト交流イベント(ソウル)
・トロントのAスペースで個展「Where is the fear?」、バンクーバーのセンターAでパフォーマンス公演(カナダ)
2001 ・ウィメンズアート「越境す女たち21」展に参加
・第3回アジア女性演劇会議でパフォーマンスをおこなう
・日韓ダンスフェステュバル参加(ソウルにて)
・カミーラ・サンダース(ピアニスト)と英国で、パフォーマンス、ワークショップ
・トキアートスペース企画パフォーマンスシリーズに参加
2000
・ラ・シャンブレ・ブランシェギャラリー主催第2回国際視覚芸術交流展(ケベック)に参加
・エール・リュギャラリー企画「Text&Subtext 」コンテンポラリーアジア女性アーティスト(シンガポール)に参加   
・山上千恵子監督ドキュメンタリーフィルム「ディア・ターリ」に出演
1999 ・第2回国際女性アート交流展"Womanifesto"(バンコク)に参加
・ トキアートスペース企画展BLOW UP'99 6人のシリーズに参加 
1998
・東京都写真美術館企画展Love's bodyに参加
1997
・国際女性のアート交流展「Womanifesto」(バンコク)に参加
・南斗六星主催イトー・ターリパフォーマンス公演(仙台)
・Haigo Festival L'art japonais actuel (フランス)に参加
1996
・世田谷女性センターらぷらすで「自己表現最前線講座」に参加 『自画像96』
・第三回日本国際パフォーマンスフェスティバル(東京、長野)に参加
・サードギャラリーアヤ主催、イトー・ターリパフォーマンス+アートドキュメント(大阪)
・パフォーマンスとマルチメディアフェスティバル(ケベック)及び5都市で公演 
・アートトーク+展覧会「表現の現場」を企画及び公演 ウィメンズアートネットワーク主催
1995
・ウィメンズパフォーマンスプロジェクト
『ディスタントスキンシップ』を企画及び公演(東京、神奈川)ウィメンズアートネットワーク(WAN)主催 
・Women step East to West(リトアニア)に参加
1994 ・フランクリンファーネスギャラリー(ニューヨーク)にて公演 
・第一回シアターX国際ダンスフェスティバル(東京)に参加
1993 ・扇町ミュジーアムスクエア(大阪)にて公演
・ビスバッデン女性の美術館(ドイツ)にて公演
1992 ・民衆演劇フェスティバル(ホンコン)にafaのメンバーとして参加
・東京大阪行為芸術ヨーロッパツアー(ベルリン、アインドホーベン、ニース、 ゲント)に参加 『フェイス』
1991
・横浜女性フォーラム企画「アートフォーラム」に参加
・アジアフェミニストアートafaの企画、インドネシア、タイツアーで公演
 『わたしはここにいる』
・田島パフォーマンスフェスティバル(福島)のプロデュースに参加
1990 ・カナダ横断9都市ツアー「Performance fromJapan」カナダアートカウンシル助成 『表皮の記憶』
1989 ・9月 オランダ、ブルガリアツアー:アムステルダムのダンスラブ、 レイワーデン のスタジオシアター、アインドホーベンのヘットクラインにて公演、及び ソフィアでのインターナショナルフェスティバル "Theatre in a suitcase " に招待参加  国際交流基金助成
1989 ・8月 桧枝岐パフォーマンスフェスティバルに参加 福島
1989 ・7月 ギャラリーK、広瀬座にて公演 福島 
1989 ・5月 高木元輝(サックス)、会田健一郎(写真)とのコラボレーションによる『表皮の宇宙』を初演 テルプシコールにて 東京
1988

・4・6・9・11月『ヴァリエーション1〜4身体の環境』を公演、東京テルプシコール

1988
・4・5・6月ウイメンズフリーワークスに出演 東京
1987 ・11月 プレゼンテーションフロムISAに出演 東京
1987 ・9月 桧枝岐パフォーマンスフェスティバルに参加 福島
1987 ・8月 アート前線コレクションに出演、ギャラリーKにて 福島 
1987
・5月 『表皮とかたまり』でマイムインジャパンに出演 東京
1986 ・9月 帰国。 以後、パフォーマンスアートを始める。
1986 ・ダンスグループ・Dans Labの『Perry's Glasstown S.O.S.』に出演
1985 ・ムーヴメントシアターグループ・Stichting Schwibettusの『Terra incognita 』に出演
1984 ・『Vastelandwind (大陸の風)』を制作し、巡演活動
1983 ・契約終了後アムステルダムに移り、『Timing』を自主制作し、オランダ国内25都市公演、Spring Dance International Festival に参加
1982 ・オランダのアインドホーベンに在るHet Klein・ムーヴメントシアターに所属し『Witte Engel』『Herfestveld』に出演
1980 ・『フランシス・ポンジュの篭・蝸牛・ドアの楽しみより』を公演
1979 ・フリーになり、『迷走する路地に在りて』を公演
1976〜 ・マイムグループ気球座に所属、『墜落天使』『イカロスの飛翔と墜落』などを公演
1973 ・和光大学人文学部芸術学科在学中から、 東京マイム研究所にてマイムを学ぶ

上記のCV(写真、資料等)はPF/F Spaceより借用しています
http://www.pafspace.com/


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