From Editor

わたしたちVisual AIDS TOKYOのメンバー数人は、『CABARET FOR AlDS』というインスタレーションの展覧会を組織しました。わたしたちは、現代日本におけるエイズの言説空間、マス・メディア等で流布されるヴィジュアル・イメージを中心に検討を重ね、以下のようなインスタレーションを企画しました。

l.わたしたちが現在手に入れることのできるエイズに関する文献を
a是非読むべきもの 
bある視点(例えぱ予防)に偏っており、偏見、誤解を引き起こすかもしれないが、大方は間題のないもの 
c全体が、無知、偏見、誤解に満ちており、AlDSおよぴHIV感染に対する社会的偏見、差別を助長する恐れのあるもの
以上の3つにカテゴライズし、テンポラリーなアーカイヴ:資料館を作る。

2.上記3つのカテゴリーのなかで代表的なものについて、わたしたちのコメントを赤字で追加したものを拡大し・画廊の壁面に直接複写する。

3.広いテーブルを用意し、来場した人々とエイズについてポジティヴに話し合う。

4.ワークショップ、パフォーマンス、シンポジュームを通して文化的-批判的キャバレーとして活性化された場所にする。

また、以上のような趣旨から、このカタログについては、そのインスタレーションを解説、補足するというよりも、カタログ自体がカルチュラル・アクティビズムとなるべく編集しました。

そこで、
1.国内のエイズ・アクティビストの方のリポート 
2.エイズに関連する社会的な間題の当事者あるいは、関係者のリポート 
3.国内外のエイズ、それにかかわる差別、医学・科学の在り方を研究している方の短い論文 
4.日本におけるエイズ関連の医学的、社会的な年表
という方針でこのカタログをつくりました。わたしたちは、インスタレーション、カタログの制作を通じて、「日本においては、まだまだエイズ間題は現実感を持ち得ない」といった、わたしたちを取り囲んでいる言説が、いかに現実を隠蔽し、曖昧な楽観性のもとに『Living With AIDS』という考え方から人々を遠ざけているのかを痛感しました。
このカタログがそういった、わたしたちを取り巻く言説へのカウンター・アタックとなってくれることを願っています。

(田崎英明十荒井真一)


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